断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

食道癌手術後20日経過 チーズケーキなど

自宅療養6日目。

私が受けた腹部食道癌(腺癌)の手術は、腹と背中側を両方切開して、患部である食道の下部と胃の上部を切除して接合する浸潤の大きい手術であった。所用6時間。入院していたJohns Hopkins University Hospitalの、あそこは恐らく呼吸器と消化器外科の専門病棟だったと思うけれど、医者に言わせても看護師に聞いても「2週間も入院する患者は少ない」大手術であったとのこと。腹部側には気管支や心臓や大動脈、背中側には脊髄や肺や肝臓などがあるわけで、合併症その他接合不全等による術後1ヶ月以内の死亡率も2〜3%と高い、と聞かされてサインさせられたのを覚えている。幸い感染症もなく合併症、というか患部付近のリンパ液漏れ(chyle leak)が術後2日目に分かったものの、数日後にこれも太腿の付け根からカテーテルを挿入して修復できたようで、予定通りの退院となった。そういえば術後は翌日から歩かされた。痛みもありあちこちに管が付いているしで、深く呼吸が出来ず、病棟のフロアを1周するだけで肩で息をしなければならなかった。

長い話を短くすると、手術は上手く行ったということだ。術前に放射線&化学治療を受けたのも執刀医の好判断で、患部直近のリンパ節に、術前のCTスキャンでも判明しなかった2ミリの転移があったとのこと。これも取り除いたので、"now you are cancer free." 癌は無いぞ、とお墨付きをもらった。術後の放射線や化学療法も不要とのことで何よりだ。

昨夜は睡眠薬無しで、メラトニンを服用してから寝てみたけれど、寝つきは良くなかった。寝たり起きたり。夜は控えめか食べないほうが良いのかもしれない。腸瘻tube feedingからの栄養補給はあるわけだし。元々short sleeperで、6時間も寝ればじゅうぶんな体質なので、たくさん眠らなくても不満は無い。

朝食は昨日焼いた食パンのトースト。バターを塗りたいところだけれど、脂質は1日20g までと医者に言われているので、ラズベリーのジャムを塗ってみる。甘い。コーヒーでお腹いっぱいになり、ヨーグルトまでは食べられなかった。お腹の調子はよい。昨日食べたサッポロ1番塩ラーメンも、ハムとチーズを巻き込んで焼いたパンもオッケーだということだ。今後はもう少しタンパク質の摂取を増やしたい。

ひと通りの薬を腸瘻tube feeding から流し込んで、少し座って落ち着いてから散歩に出る。日差しは強烈だけれど、風が少しあって湿度も高くないので、まぁ歩ける。1時間弱で5,500歩。どうも肺活量が減ったようで、息切れすることがある。散歩の終わり、うちは6階なので階段で登る。途中2度休む。心肺機能は徐々に戻れば良いのだが。

帰宅してシャワーを浴びて計量。1週間前の退院時よりマイナス700g。水分なんかの誤差の範囲だろう。

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昼食に缶入りスープ。Chicken & Wild Rice。9割は確実に不味いアメリカの食べ物でも、これだけはまぁ美味しいなと思って常備している缶入りスープである。鍋で温めて食べるものの。半分くらいでお腹がいっぱいになる。「お腹がいっぱい」というか、喉元までゲップがつかえる感覚になる。これは食道を切って胃を吊り上げて繋いでいるからに違いないわけで、胃袋が喉の下胸元まであるからに違いない。逆にかつて胃袋が鎮座していたあたりの腹部が膨れた感じがしない。こういう感覚には慣れていくしかないのだろう。胃袋もそのうち少しは大きくなるのだろうけれど。

胃の上部を切っているので、「噴門」という逆流防止機能が無い。接合手術をする時に少しは何かの工夫があったとは思うけれど、以前のような機能はない。胃に内容物がある状態で横になると、容易に逆流してくる感覚がある。なので食後暫くは横になれない。行儀の良い話だ。これも慣れていくしかないのだろう。

少し休んだあと、洗濯をした。仕事にも行かないし出かけないし、大した量はない。家人のおやつ用にチーズケーキを焼く。底には食味の悪いグラハムクラッカーではなく、スポンジケーキを薄くスライスして、ラズベリージャムを塗ったものを敷く。これが酸味のアクセントになり美味い。と思う。それから乾燥機を待っているあいだ、マッシュルームと玉ねぎのポタージュを作る。ふだん仕事をしている時ならば、ミキサーにかける手間もそれを洗う手間も嫌なので作らない料理のひとつだ。けれども今は時間はある。ずっと立っていると疲れるので、休み休み作業する。

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夕食は家人には海老の焼きそば。私は昼間残した缶のスープと、マッシュルームのポタージュ。スープ尽くしだ。本来まだこういうものしか口にしてはいけないと医者には言われている。空腹感があったので、家人の焼きそばもひと口貰って食べた。食べ過ぎたようで少し苦しい。ゆっくり少しずつを忘れずに気を付けなければいけない。