断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

さらば腸瘻tube feedingと言おう

手術後概ね7週間が経った。術後2週間で退院して自宅療養を始めた最初は、水分やスープをひと口飲む以外、必要なエネルギーのほとんどを腸瘻tube feedingに頼った。

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胃瘻ではなくて「腸瘻」。食道と胃を切っているので、胃瘻は無理なのだろう。知らんけど。

食べたいのだけれど、胃の1/3は切り取られ、1/3は食道の代わりに胃管として食道に繋がれ、「胃」として働くのは残った1/3だと理解している。容量が少ないために、食べても直ぐに喉元まで一杯になり、食べたものが下りていかない感覚で不快になる。例えるならば「ゲップ」がずっと出ない感じで、これが1、2時間続く。

けれど毎日毎食少しずつ、おっかなびっくり、これくらいの量は食べられるだろうか、と調節しながら食べ続けていくと、少しずつではあるけれど、食べられる量が増えてきた。今は、ご飯ならば軽めの1膳(130gくらい)に、ちょっとしたおかず、卵や漬物や納豆や焼鮭に、お碗7分目くらいの味噌汁なら無理なく完食出来るようになった。人間の身体の回復力と適応能力というものは大したものだと思う。自画自賛。もちろん医療技術のお陰でもある。12万ドル。

食事で十分な栄養が摂れれば腸瘻tube feedingは不要になるというわけで、これを早く外したかった。日常生活に不便だし、寝返りを打つのにも神経を使う。出来ないわけではないけれど、これを付けて仕事に行くのも煩わしい。

腸瘻tube feedingを1週間中断して、口から食べる栄養だけで体重が安定している(減らない)のならば外す、と医者には言われていて、今日のアポがこれを外して1週間目、最初の医者との面談となった。体重はややマイナスになったものの、術後の3%程度の減で抑えたので許容範囲だと思うのだけれど、医者がどう判断するかはわからない。

ネットで調べると、食道癌や胃癌で腸瘻tube feedingを造設した場合、回復度合いや食べられる度合い、健康状態にもよるものの、通常2、3ヶ月程度はこれに頼るらしい。(食道癌罹患者のボリュームゾーンは60〜70代の男性)十分な栄養が取れなければ当然回復が遅れるし、生活に影響するわけだから、医者としてここは慎重になるのはわかる。私の場合は7週間なので、2ヶ月弱。やや早いのではないか、と腸瘻tube feeding担当の管理栄養士もチラッと言ってた気もするけれど、口から十分食べられるし、体重も殆ど落ちていない!と私が頑張ると、では医者に相談してみればよいということになったのである。自己主張(≒自己責任)の国アメリカだなと思う。知らんけど。

医者は私の調子を聞いて、あまり体重が減っていないのを確認すると、じゃ〜外すか、とアッサリ腹部に縫合されている腸瘻tube feedingの黒い糸を切り、エイやっ!とチューブを引き抜いた。ははぁ、チューブの先はT字型になっていて、容易には外れてこない形だ。引き抜いたお腹の穴にガーゼが貼られて、おしまい。3週間は風呂やプールには入ってはいけないが、シャワーは即日OKだという。そんなものなのか。空腸まで穴が開いてるのに、そんなんで良いのか。3週間たっても塞がらず体液が出てくるようなら連絡しろと言われる。ともあれ自由で身軽になった。有難い。

外科医に今後の検診の予定などを相談すると、術後4か月を目処に、腫瘍内科医に面会して来いと言う。血液検査などの内科的な数字と、放射線治療の晩成障害のチェック、レントゲンやCTをオーダーするのも放射線医や腫瘍内科医だからこれは納得である。昨年末に内視鏡検査で癌が見つかってから手術まで散々通った腫瘍内科医(癌の主治医)に差し戻しというわけである。ということは10月までむこう2か月間、医者に行かなくて良いということだ。年明けから続いた怒涛の医者通いから手術そして自宅療養の日々がこれでひと段落した。有難い。やれやれだ。取り敢えずは有難い。そしてなんと、外科医は酒も飲んで良いと言う。マヂか。ビールは炭酸が胃を膨らませて不快になるだろうから、ワインのほうがいいんじゃない?とまで言う。良いのか!もしかして余命幾ばくも無いから好きなものを飲み食いすればよい、という意味なのではないか…とも思ったけれど、さっそく酒(ワイン)を買って帰ろうと思ったけれど、まだ飲む気分(≒ 体調)ではないと思ったので自粛。医者が言うには、術後12週間で、術前の身体能力の戻るのが通常だというので、あと少し、5週間くらいの体調をみて、またちょっと飲もうかなと思っている。そして腫瘍内科医は酒は癌治療の何の助けににならないから飲むべきではない、と言うだろうというのも知っている。

ともあれ今日はいい日だ。

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また酒が飲める。(地元の銘酒・浦霞)