断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

入院11日目

土曜日。

横隔膜だろうか、昨夜は呼吸するたびに痛んで、オキシコドンを処方してもらうものの、頭だけボンヤリして痛みにはあまり効かず。そりゃあちこち切ってるのであちこち痛むわけだ。はぁはぁ浅い呼吸をしながら過ごす。

朝、偉そうな医者が回診に来たあと、NP(Nurse Practitioner---ある程度の医療行為も出来る上級資格看護師)が来て、左の脇腹に付いているドレインを外してくれた。痛くて変な声が出た。しかしよし。これでドレインは右側の残りひとつだけだ。また少し自由になった。

午後に来て一方的に喋って行った医者によれば、このドレインも明日から明後日には外すと言われ、おいおい大丈夫なのか?と逆に心配になる。もはやちょっとでも身動き出来て、1人でなんとかなりそうな患者はどんどん追い出すというアメリカに医者の方針がよくわかる。容赦ない。医者というよりは保険会社だろうけど。

そういえばswallowing test にパスしたのに、水を飲んでいいとか、流動食を食べ始めるとか言われない。水分も栄養も点滴というか胃瘻から全て補っているので、乾きも空腹感も無いのだけれど、やはり口からの食事は、繋げたばかりの食道と胃にはまだ負担が大きいのだろうか。

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と思っていたら、夕方、トロミがつけられたアップルジュースとクランベリージュースが出て来た。入院前夜に口にしたゲータレード以来11日ぶりに口にする「食事」だ。甘ったるくて不味い。どうせなら味噌汁が良いなと思った。けれども順調にいけばそのうち食べられるはずだ。焦らずいこう。しかし空腹感もないし、今現在の胃の容量がどれだけあるのか想像もつかない。うっかり入れ過ぎて戻してしまうなんてことは避けたい。誤嚥についてはうるさく言われたけれど、量やペースに関しては「ゆっくり」「やすみながら」としか言われていない。まぁゆっくりやる。美味しくないし温くなって来たので大半を残す。半ば冗談で「コーラある?」って聞いたら「Sure!」と看護師が答えて、トロミ付きのなんとも珍妙なコーラを持って来てくれた。これも美味くはない。駄菓子屋の味がする。

夏至の日が暮れていく。去年の夏至の頃などは己が癌に罹っていることなど知る由もなく、夕方ザブザブと泳ぎに行って、ガブガブと酒を飲んでいたはずだ。来年の夏至はせめて自宅でゆっくり過ごしたいものだ。