断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

抗癌剤投与最終日

今日で週1回5週目5回目の抗癌剤投与が終わった。SARS-CoV-2の騒ぎも重なって、気が重い通院だった。抗癌剤はパクリタクセルカルボプラチンをそれぞれ250mlずつ。たぶん。他に吐き気止めのステロイド剤。1回の投与に約3時間弱かかった。

初回こそ吐き気や血圧の低下、ひどい冷や汗など、リアクション(と医者は言ってたが、あれはショックかアナフィラキシー状態だ)があって、どうなることかと思ったが、2回目以降は事前に大量のステロイド剤「デクサメタソン」を服用して臨んだためか、何の問題もなかった。ステロイドというものは凄いものだと思う。

今回の抗癌剤投与直前の血液検査での白血球の数字は1,900で、最低基準値の3,000をかなり下回っている。コロナどころか、あらゆる感染症に気をつけて、息を潜めるように暮らしていかなければならない。900を切ると、治療中断。骨髄の造血を促す薬を飲んで、白血球の数字を増やして、治療を継続するのだという。

これに、あとは2回を残すところの放射線を終えれば、1ヶ月後まで医者のアポは無い。

放射線による癌周辺組織のダメージと、抗癌剤による内臓や造血、免疫システムの回復を待って、予定通り行けば8週間後に切除手術となる。

医者の説明によれば、腹部と背中を切開する手術で、所要8時間。術後ICUに2日間は入らなければならない大手術となり、そのあと普通病棟に入院1週間と言われている。マジか。で、州で1番というほど大きな高度医療設備のある病院に、このSARS-CoV-2のご時世に、それらが予定通り確保出来るのかどうか。正直疑わしい。

それはさておき、これだけ通院入院手術をしたら、アメリカの病院でどれだけのお金がかかるのか、とんでもないことになっているのではないか?と興味のある人も多いかと思う。破産する気か?筆者は富豪なのか? どちらでもない。

この辺りは落ち着いたら追々書く予定でいる。術後目が覚めて生きていればの話だけれど。ざっくり書いておくと、加入している医療保険のおかげで、総額$3,000 ≒ 32.4万円を超えない。はず。丸腰、素で払うことになったら、少なくても1,000万円は超えてくると思う。何せ抗癌剤だけの請求書をチラ見したら、$6,800 ≒ 73.4万円とサラリと印字されていたくらいだし。病院からこの金額がまず保険会社に請求され、保険会社と病院で合意している金額で支払いが行われ、差し引きが私に請求されるという仕組みなので、私には実際には$50くらいの支払いしか発生しない。はず。

しかし、アメリカの医療費は高い高いと日本で認知されているのは、日本の医療は安くて素晴らしいですよ、という国民に向けてのプロパガンダも多分に含まれている気がするのだ。

日本で、内視鏡検査で食道癌と診断され、PET/CTスキャン、内視鏡超音波検査、術前放射線&抗癌剤治療、外科手術後ICU +入院1カ月というコースを辿ると、自己負担3割としても、相当な金額になるはずだ。10万円くらいで済むものなのか?高額医療補助制度を使えば、上限があるのだろうけれど、調べていないので詳細はわからない。

それはさておき。

わたくしの食道癌は治療中で、放射線と抗癌剤は済ませてあるわけだから、それらの効果が最も高いと思われる然るべき時期にに手術をするべきだということに疑いの余地は無い。1ヶ月くらいのずれ込みは仕方ないにしても。

ともあれ自分がやるべき事はやっている。あとは、自分ではコントロール出来る事ではないのだ。といつも思っているので、自分としては冷静に毎日を過ごしている。

SARS-CoV-2が、早く鎮静化してくれることを願うばかりだけれど、どうやらそう簡単な話でもないようだ。日本でいち早く「抑え込みに成功」したとされる北海道ではまた感染者が増えているというし、震源地の中国武漢では、せんじつ外出移動禁止が解かれたけれど、強毒化したウイルスが、第二波、第三派として感染者を増やすかもしれない。少なくても歴史はそう語っている。今年いっぱいは悲観している。

 

抗癌剤の点滴を昼過ぎに終えたあと、スーパーで野菜と、何故かピザが食べたくなり、焼いて並べてあるものをどーんと、2切れ求めて、帰宅してオーヴンで炙ってムシャムシャ食べた。2切れで$5ほど。安くてそこそこ美味い。家人は、そういう邪悪ものは一切食べない教、なので、鯛焼きの型でホットサンドを焼いて出した。あれは便利だ。ムシャムシャ食べていた。

女性が長生きだったり、SARS-CoV-2での死亡率が男性より低い、という事実は、こういう心がけが案外大きいのかも知れない。知らんけど。

医者に言わせると、食道癌なのに、その特長的な症状である吐き気や食欲の不振が無いのは、癌が下部食道と胃の上部のジョイント部分にあり、十分に食べ物が通るスペースがあり、よく収縮出来る部位だからだという。いまだに自覚症状らしきものが無いのだから、大腸がん検診の時に「うっかりついでに軽い気持ちで」内視鏡検査でもしない限り、相当進行して、いよいよおかしいと自覚症状が出なかった限り決して癌は見つからなかっただろうと思うと、少し震える。いや、かなり震える。

食道癌なのに食欲があって、ピザみたいな脂っこくで刺激の強いメリケンフードも食べられるのは有難い。ダイエットコークもガブガブ飲む。アメリカ人のソウルフードを食して満足だ。

夕食は、1パウンドはあろうかというステーキ肉を焼いて、ワサビ醤油でムシャムシャ食べる。$12くらい。抗癌剤の副作用で鉄分が足りてないような気がしたからだ。アメリカの牛肉は安くで美味い。いきなりステーキが成功するのは難しかっただろう。家人は、アメリカの肉は不味い教の信者なので、こういうものは絶対口にしない。作り置きして冷凍していた餃子を水餃作にして出す。モグモグ食べていた。長生きすると思う。

朝に飲んだステロイドと、点滴で打った別のステロイドの効果が切れてきたらしく、抗癌剤の副作用と思しい顔の火照りが出てきた。熱は自分にしては少し高めの97.7°F= 36.5°C。それから声のかすれが少し。

便秘予防にピンクの薬を3錠。食道と胃の粘膜の荒れを保護するシロップ剤2種類。メラトニン5mg、横になるもののさっぱり眠くならないので、主治医に頼んで処方してもらったエスゾピクロンという睡眠薬も飲んでみる。これ何度か飲んでみたけれど、私には効かない気がする。いや、ただの食い過ぎじゃないのか。

 

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抗癌剤最終回記念ということで、ダイエットコークを飲みながら点滴を受けてみる。