断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

抗癌剤投与初日の長い半日

Chemo therapy: 抗癌剤治療 第1回目。

抗癌剤はちょっとキツかった。

今朝2回目の放射線を受けたあと、隣の病棟に移動して抗癌剤の点滴を受けた。放射線は10分もかからないので、朝から夕方までアポが比較的自由だけれど、抗癌剤は2種類を最短でも約3時間半かけて点滴する都合上、朝にしか出来ないと言われて朝に来ている。

ひさしぶりの朝6時起き。時計は夏時間なので、朝7時でもまだ薄明といった感じ。

病院着。 

あっ、あの帽子、抗がん剤で毛が抜けた人が被るやつ、買っておこうかなと思いたつ。

Yo! それカッコいいですね。何処で買ったのyo?

って、具合も機嫌も悪そうな癌患者、しかもご高齢の白人に話しかけるほど、わたくしは陽気なアメリカンではない。あとでアマゾンで探そうと思うけど、なんて探せばいいんだろう? Men's hair loss cap とかそんなのか。

Men's Chemo Cancer Hair Lossと書いてある。「男性用抗癌剤脱毛」ときたもんだ。ストレート清々しい。買った。

抗癌剤は2種類、CarboplatinlとPaclitaxolというもので、標準的な抗癌剤のようだ。

9:15 看護師さんの説明。最初に吐き気止めだという点滴をうたれる。

Diphenhydramineと、Famotidine と、Dexamethasoneと書いてあった。

そうか。吐き気は覚悟だな。リラックスする成分も入ってるから、眠くなるとも言われる。いや、このあと車を運転して帰るつもりだし、なんなら夜勤の仕事があるんだけど大丈夫かと少し心配になる。まぁここまで来たら、煮るなり焼くなり好きにしやがれ、という気分でもあったので、はいそうですかとだけ答える。

10:30 先にPaclitaxolの点滴が始まる。10分もすると、急に気持ちが悪くなってきた。吐き気(というよりは、ゲップがつかえて出ない感覚)が少した。体上半身が痒くなり、冷や汗がどっと出て、少し呼吸のし辛さを感じた。スマホに記録を入力していたのだけれど、それどころではなくなる。看護師さんに知らせると、直ぐ医師が来て、Paclitaxolの点滴をを一時中断、生理食塩水のみの点滴に切り替えられる。血中酸素濃度は正常だけれど、血圧が下がっていたようだ。一番最初の投与時によく表れる普通の反応だから、落ち着いてゆっくり呼吸をするようにと言われる。それから目が充血して赤いことを指摘される。これは珍しいことだったようで、副作用なのかどうかはわからないものの、3,40分で回復する。

いやしかしこれはとんでもないキツい毒だなと思った。昔バリ島でキノコ入りのオムレツを食らったときよりも10倍くらい「死ぬかもしれない」と思った。

最初に点滴された吐き気止め+リラックスする薬剤を追加される。30分くらいで落ち着いたので、Paclitaxolを少しゆっくりのペースで点滴再開。

こんどは寒い。鼻が冷たい。寒気がして少し震える。けれどさっきのように具合が悪くなったり、冷や汗が出たりはしない。眠くなりウトウトする。様子を見てPaclitaxolの点滴の速度を早められる。

15:00 ようやくPaclitaxolの点滴が終わる。中断もあったので、所要5時間半

続いてCarboplatinの点滴が始まる。

空腹を感じる。朝もあまり食べてなかったし、昼頃には終わるととは思っていたので、口にするものは持ってこなかった。あたりに「自由にどうぞ」と、コーヒーや紅茶オレンジジュースやクラッカーが置いてあるけれど、ちょっと触手が伸びない。

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家人が、カフェテリアからツナサンドを調達してきた。グッジョブ。$5.29か。美味かった。空腹は最高の調味料

点滴についているペースを調整する機器をみると、所要1時間と少しと出ている。そうか。これをチョイチョイっと操作すれば、もしかしてものすごく早く点滴が終わるのではないか?と、思いつくものの、さすがに毒をパイペースで点滴注入する度胸は無い。

隣で独りで点滴を受けていた白人の高齢の女性が帰る段になり、「私の財布が無い。大事なものが全部入ってる財布が無い。」と言い出した。看護師さんや、(おそらくは老人介護施設から)迎えに来たスタッフとヘルパーさんは、互いに何やら目で合図を交わして、探しておくから大丈夫などと言って連れていった。ああ、もしかして認知症を患っている人なのかも知れないと感じた。

点滴中「腕を下げて真っ直ぐにしてて。」と何度も看護師さんに注意されていて、その度に小さくなって謝っていた。これは見ていてなんだか切なかった。老婆は帰り際に私たちのほうを向いて Good Luck と静かに挨拶をしていった。

グッドラック

16:15 身体に妙なリアクションも起きず、Carboplatinは予定の1時間で点滴が終わり、家路につく。車の運転も問題なかった。知らんけど。

着替えて夜勤の仕事に出勤。ハードモードだけれど今のところ体調は悪くない。しかし白血球や好中球の値が下がって免疫力が弱るので、感染症には気をつけろと散々注意されている。鼻がグズグズするのは花粉のせいだ。たぶん。花粉症じゃない筈だけど。

夕食は普通に食べて、吐き気もないけれど、筋肉痛や関節痛、下痢や便秘も副作用としてあるようなので、さてどうなることやら。なんとか耐えて手術までいきたい。。

つぎの抗癌剤は1週間後、残り4回。放射線は残り21回。