断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

午前3時に目覚ましをかけてバナナを食べる

放射線は17/23回、抗癌剤治療は、4/5回目がおわった。8割ほど終了ということになる。

東京競馬場芝2000メートルコースに例えれば、大欅の向こう(あそこはヤバい)を、無事にくるっと回ってきて、最後の直線のこ400メートル地点、40‰の登り坂に差し掛かったところだ。分かりにくい。

医者は "the backstretch" と言っていたので、ん?向こう正面の直線??と思ったが、これはこの後予定されている切除手術も含めての、「半分おしまい」のことだろうと思う。

これから第三コーナーと最終コーナーの間の大欅に差し掛かるのがと思うと、少し怖いな。(あそこはヤバい)

ja.wikipedia.org

競馬は競走相手がいて、馬もその関係者も馬券を買う方も、生活とお金と夢がかかっているけれど、「癌治療は、逃げ切るか死神に追いつかれるか、命を賭した逃げ馬の独り旅である。」と寺山修司が書いていた。(嘘だけど)

とまれ、くるっと無事に回ってきたい。

それはさておき。

放射線や抗がん剤は、これまで心配していた副作用も、睡眠の浅さと、少しの胸焼け、一瞬のかかとの痺れくらいしか現れず、髪も(まだ)抜けず、感染症にも(まだ)かからず、吐き気もなく食欲もあり体重も落とさずやっこれている。ああ喉のかすれ声が少し出しにくい感じがあって、もしやコロナか?と聞いたら、いや喉に炎症はないから、それは食道に放射線を当ててる副作用だと言われて少し安心した。

体重に関しては驚きで、好きなものを好きなように作って食べているのに、減らないのは分かるとして、増えもしない。

雑にカロリー計算をしても、体重は増えないとおかしいのだが、やはり癌細胞よ、お前なのか?お前はあんまり食うな。

この副作用が無い、というのは、抗癌剤点滴の前日に服用しているステロイドのお陰もあるのかも知れない。

Dexamethasone 4mgという錠剤で、これを5錠20㎎、抗癌剤投与予定時刻12時間前と6時間前の2回服用してくるようにとの指示なのだ。通常処方の4倍量だと医者は言っていた。

治療点滴開始は朝9時なので、12時間前の午後9時は、夕食後寝る前に飲めば良いが、問題は6時間前の午前3時だ。

寝てるに決まってる。

しかし初回の抗癌剤投与時のリアクション…と医者や看護師は言うが、あれはショック状態だ…血圧が低下してあげる大量の冷や汗をかき、呼吸がしにくくなり、吐き気というか、出そうででないゲップのような症状にも苦しんだ。

あんな思いは2度と御免だから、何としてでも朝3時に起きてステロイドを飲もうと目覚ましをかける。

空腹時に服用すると胃を痛めるし、それでなくても放射線治療で、食道と胃の粘膜がダメージを受けているはずだから、クラッカーか何かを食べてから服用しろとの指示。

日本ならこんなときは牛乳を推奨される気がするけれど、調べても医者がそ言っているわけでもなさそうだ。もしかしてアレは私の家だけルールだったのかもしれない。知らんけど。

それで午前3時に起きましたとも。午後9時に服用したステロイドのお陰か、深く寝入っていたのだけど起きた。

クラッカーはあるけど、ザクザクした食感が嫌だなぁと思ったので、キッチンで熟しでも遠慮に無い芳香を放っているバナナを食べることにした。

スッキリした甘さで思いのほか美味かった。酒を飲んでいた頃は、胸焼けするし、あまり好きではなかったけれど、今はたまに買っておくし、安いし簡単な朝食に重宝している。胸焼けもしなくなった。

人の体質って変わるものだな、と思いながら窓の外を眺めると、これから沈んでいくのだろうなという半月牛乳窓から見える。

ほう綺麗なものだなとしばら眺めていたら、もう少しでステロイドを飲み忘れるところだった。

夜中の3時に目覚ましをかけてバナナを食べたのは生まれてはじめてかもしれない。

新聞配達をしていた頃は、3時では寝坊の領域だし、何か食べたら逆に動くのがつらくなる。途中で缶コーヒーを飲むのがいちばん効く。

早朝深夜に働く人はそれを経験的に知っているはずだ。体には良い気がしないけれど。

それはさておき。

来週の最後の抗癌剤の前のご前3時には、せっかくだから目覚ましをかけて、生まれて初めて何を食おうか。

お祝いだから寿司かな。