春分の日
ようやくプランターと土を買いに行けた。あとは種まきするばかりまでに漕ぎつけた。今年はあっという間に暖かくなってしまって、うちの前のソメイヨシノはもはや満開だし、医者通いで忙しくて、出遅れてしまった感があった。
去年まで使っていた土は、夏の終わりに葉っぱが全滅するほど虫が大量に沸いてしまったので、黒いゴミ袋に入れて蒸し焼きにしておこうと置いておいたら、誰かに撒かれてしまった。プランター代わりに使っていた発泡スチロールの箱も、痛みが激しかったので捨てた。心機一転ということだ。
新しい土を入れたし、害虫除けに効果があるという乾燥させた蜜柑の皮を砕いて混ぜ込んでみた。なるほど、ある種の虫が嫌いそうな匂いはする。何事も実験だし。
今年は医者通いが続くし大きな手術も控えており、体調が悪くなって思うように動けなくなるかもしれない、という心配があるのだけれど、せめて紫蘇や三つ葉などの香味野菜は育てておきたい。
生きる希望、とまで言ってしまうと大仰なのだけれど、蒔いた種が芽吹いて、日差しが当たれば当たるほど、もりもりと茂る葉を眺めるのは、胸のすく思いがするし、元気が出ることではないか。
秋が来て穂紫蘇が出る頃には、私の手術の傷も癒えて、もしかすると酒を飲めるくらいにまで恢復して、おおお、きみも俺もひと夏頑張ったな、と互いの健闘を称えあいたいではないか。
自分が面倒見られないときのために、幾人かに事情と水やりを頼んで種を蒔く。