断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

閑かさや岩にしみ入る蝉の声

松尾芭蕉だったと思う。松尾芭蕉だ。このひとは音の表現、というか、「静寂さ」を際立たせるのが巧い。

古池や蛙飛びこむ水の音

夏草や兵どもが夢の跡

も芭蕉だ。

しーんとした情景が浮かぶではないか。

改めて、

閑かさや岩にしみ入る蝉の声

子供の頃はこの句に今ひとつピンとこなかった。小学校の教科書に載っていただろうか。蝉がビャンビャン鳴いているのが静かなわけないじゃないか、と。平易に見える句だから、小学生くらいに鑑賞させるのに良かれと思って教科書に載せているのかも知れない。がしかし子供の私にはサッパリ分からなかった。

しかし長生きは出来るならしてみるもので、日々の忙しさや死ぬかもしれないピンチをちょっと切り抜けて、うっかり歳をとって、いまは分かる。たぶん。

当地ではまさに蝉が盛りで、木々の多いところでは波のうねりのように、何種類かの蝉が鳴いたり鳴きやんだりしている。日本の蝉と同種かどうかは分からないけれど、ニイニイゼミのような鳴き声の蝉が優勢だ。

ja.wikipedia.org

そして蝉の鳴き声以外の音がしない。これが「閑か」だなと思った。「静か」ではないけど。

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