断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

バッファリンを飲んで考えた

昨夜は少し熱があったので、バッファリンを飲んで寝た。効いたようでさっき起きて熱を測ったら35.7℃だった。アメリカでも市販されてるバッファリン。というかもともとアメリカの薬だ。1950年代に開発されて、長い歴史があり安心出来る薬のひとつだ。主成分はアスピリンですね。少し古いアメリカの小説にはよく出てくるアスピリン。

バッファリンを飲んで考えた。

子供の頃、酷い風邪(インフルエンザだろう)をひいて病院に行くと、決まって処方されたのがバッファリンだった。小粒のオレンジ色の小児用バッファリン。もっと小さい頃は、プラスチックのボトルに液体のシロップ剤だった記憶がある。あれがバッファリンだったかどうかは分からないけれど。たぶん違う。

小学校の低学年くらいまでは、よく酷い風邪をひいた。熱や咳や吐き気で、具合が悪くて学校を休んで、仕事を休んだ母親に医者に連れて行ってもらって、薬を飲んで寝る。熱があると奇妙な夢を見たりした。普段はそんな面倒なことをしてくれない母親がリンゴに摺り下ろしを食べさせてくれたり、特別な感じがしたものだ。時々寝込むのも悪くないな、と思ったりもした。

中学に上がる前くらいから、大盛りのメシを丼で食らうすっかり丈夫な身体になり、20代から最近まで、風邪や倦怠感で寝込んだ事など無かった。腰痛や痛風で臥してしまったことはあったけれど。大人になって自分の免疫系は立派に働いてきたのだと思う。あちこち旅行に行って変なものも食べたし、かなり無理な仕事もした。30歳でアメリカに単身渡ってきて7年間は健康保険にも入ってなかった。返す返すも恐ろしい。丸腰でジャングルの中を歩いてきたようなものだ。運が良かったのと、比較的丈夫な身体だったことに感謝しか無い。

今年52歳になった。人生の半分はとうに過ぎている。そして大病をした。自覚や症状は全くなかったのだけど、癌だと言われて検査結果を見せられて納得して、あとは流れ作業のように抗癌剤を点滴され、放射線を浴び、外科手術をされて2週間入院した。退院して1ヶ月自宅療養した。身体の衰えを感じた。

そうなのだ。身体のあちこちにエラーが出る歳になったのだ。私は以前から人間の身体は50年程度までしか生きるようにデザインされていない思っていて、あとは騙し騙し、メンテを入れながらオマケの人生を生きていくものだと考えている。歯などはあちこち治療してボロボロとまでは言わないけれど、何本もの差し歯やインプラントまである。もちろん人それぞれ持って生まれた多様性があるから、それよりも短い人も長い人も居るだろうけれど。生命体としてにピークはとうに過ぎたことは自覚しておきたい。人間には知恵と社会性があるからまぁ元気であればもう少し生きていられるだろうけれど。自分は健康で50歳を越えたので、運が良いほうだろう思う。

長い話を短くすると、確実に老化しているのだ自分は。免疫系も加齢によってその機能が低下しているのだろう。(いや今年の癌治療とそれに伴う体力の低下の影響もあるとは思うのだけれど)。このブログには書いて来なかったけれど、術後の体力の低下に伴ってか、全身の痒みや出来物に暫く悩まされた。今はすっかり良いけれど、これも免疫力が低下していたのだろう。よくぞ新コロナに罹らず過ごしてきたものだ。

しかし、仕事で人手不足であまり休めずに疲れてしまって、休日になった途端にどっと疲れが出て1日中寝込んでしまう、などということはこれまでなかった。しょっ中酷い風邪をひいてお腹を壊していた小学校の低学年の頃を思い出してしまった。子供の頃のように身体が弱っていくのだろうかと少し暗澹たる気持ちになった。けれど、老化なら仕方がない。受け入れてそれなりに生きていくだけだ。バッファリンが効いてスッキリ目覚めた早朝にそんなことを思った。

いやまだ術後5ヶ月だ。もう少し回復するだろう。今日も泳ぎに行く。