断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

【閲覧注意】アメリカで粉瘤の切除手術を受ける その1

粉瘤である。アテローマ(atherome)とか、外科医はシスト(cyst)と言っていた。少なくても20年以上も背中にあったものを、遂に切除してもらった。さようなら私の粉瘤。

以下、あまり美しくない話と写真があるので、苦手な向きはページを閉じることをお勧めする。例によって検索で辿り着いた誰かのお役にたてれば幸い、記録として残しておくことにする。

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背中の粉瘤は長いことあった。アメリカにくる前の健診で指摘されたのを覚えているから、少なくても21年間は在った。当時は「脂肪腫」と言われたけど、やはり粉瘤だったようだ。

患部は右肩の肩甲骨と首筋のあいだで、好発部位らしい。時々臭い液体が出てくるくらいで、さして気にもしないで暮らしてきた。

これが去年、日本に一時帰国した帰り際に、上野のマッサージ店でグリグリと揉まれてしまってから何故か活性化してしまった。頻繁に炎症を起こしては腫れ上がって、臭い液体とともに血まで出るようになった。旅の疲れで抵抗力が弱ってたのかもしれない。

抵抗力がまた落ちたのは食道癌の抗癌剤&放射線治療開始から術後までだ。薬や点滴はドカドカ打たれるし、身体は弱るし、退院してもあまり食べられなくて栄養状態も良くなかったのもあったと思う。ふだん皮膚は弱くはないのに、頭皮や脇の下などにも出来物ができた。背中の粉瘤も、腫れては潰れるを10日に一度くらいのペースで繰り返した。身体の表在菌が良くない方面に調子に乗った感がある。

これはもう不快だし辛抱堪らんと思って、かかりつけ医に相談したら、やはり切除しないと根本的な解決を見ないということで、外科医を紹介された。

アポを取って外科医に会いに行くと、ははぁ、これはcystと呼ぶのだが、たしかに取り除かないと治らない、と言われる。炎症を起こしているので、1週間ほど抗生物質を服用して炎症を止めてから切除するということになった。処方された抗生物質はKeflex(ケフレックス)というもの(のジェネリック)だった。

抗生物質というのは凄いもので、腫れていた粉瘤がみるみるうちに小さくなった。ついでに腸内細菌の環境が変わったのか、お腹も緩くなった。これは2、3日で治ったけれど。

そして1週間が経った。いよいよ手術である。

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こんな診察台にうつ伏せになって、患部周りに局部麻酔を打たれる。麻酔の針を刺す前に、冷たいスプレーをかけられ、針の痛みを軽減すると言われる。たしかに冷たいスプレーをかけらた後に麻酔の注射を打たれても少し痛いと感じるくらいだった。

日本はどうだったか記憶にないけれど、アメリカは歯科医でも外科医でも、痛みに関するケアはかなり入念にやる。痛みは絶対悪だというくらいの勢いである。食道癌の術後入院している時も、1日に何度も看護師がきて、何処が痛い?痛みの強さは1から10のうち幾つだ?と聞かれて、その都度適切な処置をしてくれた。ペインコントロールチームというのも1日に1度来た。曰く痛みというのは我慢してはいけないそうである。痛いと呼吸が浅くなりがちで肺炎のリスクが上がるとか、痛みが我慢しきれないところまでいってしまうと薬も沢山使わなければならないし、効きにくくなるからだという。痛みは我慢しないで直ぐに処置するのがペインコントロールの基本ということらしい。なるほど。我慢しないのはアメリカの国民性かと思ったけれど、結構合理的なことなんだな。

さて局部麻酔を打たれてしばらくして、外科医が患部を揉んだり針を刺して痛みがあるかどうか聞く。痛みは感じないとなって、切除開始。ものの10分と少しで、切除と縫合が済んだ。少しだけ出血したけれど、圧迫したら止まったようだ。縫合の上にドレッシングという防水性のある透明な傷テープのようなものが貼り付けられる。その上にガーゼ。24時間は濡らしてはいけないが、その後のシャワーはokだという。また、縫合は「溶ける糸」で行ったので、抜糸のために再診の必要はないとのこと。痛み止めは市販のTylenolでも良いと言われたものの、念のためとオピオイド系のtramadol(トラマドール)50mgの処方箋を貰う。5錠で¢61。ドラッグストアで市販の痛み止めを買うよりは割高だけれど、オピオイド系の痛み止めは市販されてない。

切除して取り出した、親指の先ほどの大きさの袋状の粉瘤も見せて貰った。こいつか、20年以上も背中に居て時々臭い液体を溜めては吐き出してきたのは。ご苦労さん、サラバだ。こいつはしかし私のアメリカ生活20年と共に居たわけで、少しだけ寂しい気もする。思えば20年いろいろあったな。いや本当に色々あった。さらばだ。

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切除前の粉瘤様御近影。右肩肩甲骨の左上あたり。

気になる医療費は初診料の$35しか払っていない。あとは保険でカヴァーされるはずだ。保険なしで素で行ったら、医者にもよるけどたぶん$500くらいはするんじゃないだろうか。後で請求書が来たら見てみる。

アメリカで暮らすのに大事なものは、良い医療保険と車のメカニックと弁護士だとよく言われる。全くそうだなぁと思う。幸い弁護士のお世話になった事はないけれど、トラブった人の話は聞く。

切除後4時間ほど経った。局部麻酔は切れてるはずだけれど、殆ど痛みは無い。椅子に座って患部に圧がかかると少し痛むくらいだ。