断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

Ultrasound fine needle aspiration の結果(食道癌)

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(検査病棟待合室には、付き添いの人だけが分かるように、番号づけされた患者の検査の進捗状況が表示される。合理的でよいと思う。)

 

Ultrasound fine needle aspiration という検査を受けてきた。内視鏡に細い針様の器具をつけて、内視鏡肉眼だけでは見えない癌の広がりと組織への浸潤度を超音波で造影して測る検査。だと思う。

当日。麻酔をするので、自分で車を運転してこない事。ひとりでは帰せないので、大人の付き添いと来ること、という指示があったので、Uberを呼んで病院まで行く。家人は免許を持っているけど運転しないので。医者までは片道3マイルで$9位。近くてよろしい。

受付でチェックインを申し出ると、本人確認をされて、同意書だの宣誓書だの何だのの書類にたくさんサインさせられて、検査着に着替えて、ベッドに横になって、看護師からまた本人確認をされて、既往症や何やらを聞かれて、血圧体温心電図酸素濃度を測られて、なんだかよく分からない点滴されて、麻酔医が来て、また本人確認されて、これから何するか分かるかと聞かれて、検査室に運び込まれると検査医が来たのでちょいと挨拶して、はい麻酔を入れるよーと言われて…からは全く記憶が無い。毎回思うけど、麻酔ってのは凄いものだ。あのまま意識がないまま死んでても自分は絶対分からない。苦痛も無いと思う。

検査自体は30分くらいだったようで、気がついたら検査前に着替えをした準備室に戻って来ていた。眠いとか頭が痛いとかぼうっとするなどの症状は無い。30分だけ効かせる麻酔の技術があるということだ。

ほどなく内視鏡超音波検査をした医師がやって来て、写真付きの検査所見リポートを渡されて説明をうける。曰く、surgeonつまり外科医(というか手術をする医者)を紹介すると言う。あ、この時点で、わたくしの食道癌は、現時点では手術適応なのだなと理解する。浸潤度(T因子)はT2であるとも言われた。リンパ節転移(N因子)については聞聞きそびれたけれど、リポートを読むと、メインの腫瘍の下、動脈の上の位置にに4mmほどの低エコー反応が認められるリンパ節を発見した、とある。医師は明言しなかったけれど、となれば、N因子はN1で、ステージII見当ということになるだろうか。手術適応か。抗がん剤治療と前後するかもしれない。

リポートを改めて読むと、わたくしの癌は日本人には少ない欧米型の「腺がん」と書いてある。がんは食道と胃のつなぎ目付近にある。アメリカ生活20年。身体も欧米化してしまったということだろうか。欧米か! …さらに後で調べると、「飲酒」は食道癌の腺がんのリスクファクターに挙げられて無い。…なんだ、じゃー年明けから禁酒しなくても良かったんじゃないか?というわけでも無かろう。これから抗がん剤なりの治療が始まるわけだから、肝機能をアルコール分解という回避可能な仕事に使うわけにはいかない。けどまぁ、リスクファクターを持っていなくても、リスクグループに入ってなくても、私のように、癌になる人はなるわけだ。食道がんは60〜70代に多いって、私ゃまだ51だし。

 

参考にした食道がんの日本語の解説ではこの辺が詳しいかしら ↓

www.jfcr.or.jp

 

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看護師が、帰宅してよいと言うので、Uberを呼ぶ。やたら愛想が良いドライバーだった。けれど、途中、突然ガソリンスタンドに停めてから、I am asking your permission to put gas because I have been driving for ten straight hours today …とかなんとか言う。客を乗せてたあとに、無言で車を停めておいてから「許可」も何も無いだろう?と思ったけれど、Uberってのはあれだ、早い者勝ちでの客の取りあいだから、ガソリンなんか悠長に入れてられないわけだ。事情は分からんでも無いけど。外は寒いのにドアを開けっぱなしで給油するし。それならば、評価は目いっぱいオマケしても☆☆☆★★だ。チップも無しだ。慌てるナントカは貰いが少ないのだ。残念だったな。

手術か。主治医の言う通り、アグレッシブで根治を目指す戦いというわけだ。内視鏡でもなく、腹(鏡)腔手術でもなく、ガチの開腹手術だろうか。となると大がかりになるかもだな。もうこればかりは、医者に聞くしかないので、自分で調べても仕方がない。

車の運転も運動もしてはいけない、大きな決断も今夜はするな、と麻酔の影響をまた念を押されて帰宅したので、もはや食事をして寝るくらいしかない。丸一日ちかく絶食したいたので、気持ちは食べたいけれど、水分をたくさん摂ったからか、あまり空腹を感じない。何が食べたいかよくわからないまま、夕食は豆乳鍋。とインスタント焼きそば。濃い味が美味かった。

安心、というわけではないのだけれど、予想していた最悪の事態ではなかったいうことで、よく眠る。

朝、出勤して、ちょうど私の癌のことを話している数少ない同僚と会う。先日「治ったらぜひ」と言って、スパークリングワインをくれた粋な男だ。どうでした?と聞かれたので、Ultrasoundの結果を話して、どうやら手術は出来るようだ、と言ったら、良かったじゃない!と喜んでくれて、そして少し泣けてきたと言って、本当に涙目になっていた。マジか。私ごときに涙してくれるのかこの人は。彼も家族の病気や怪我などで色んな経験をしているのは聞いているし、様々な思いあるのかもしれない。とはいえ一介の職場の同僚に親身になって心配してくれていることに驚いた。このあと私が手術することになって、病欠となれば、仕事の負担が確実に増えるのに、だ。その気持ちの温かさに勿体なくて頭が下がった。ありがたい。お返しができるまでは死ねないなぁ。

午後、その後調子はどうだ?と看護師からfollow upの電話がある。アメリカでは医療はサービス業なのだ。