断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

アメリカでインプラント(覚書きその1)

30番。日本の数え方で言うとたぶん「右下6番」。これはいちばん早く、6,7歳のころに生えてくる永久歯らしいのだけど、私は始末が悪い子供だったので、早々に虫歯になり、銀の被せもの(クラウン)をしてもう何十年にもなる。

先日、何だか熱いものが滲みる感覚があり、歯科医に電話して診て貰おうとしたところ、手元のレントゲンを見ながら、あーそれはたぶん昔やった root canal 根治治療が不完全で、感染してるんじゃないでしょうかねー。と、専門医の受診を勧められた。

私も大概歯が悪いのだけど、この、昔(2、30年くらい前)日本でやった不完全な根治治療が、渡米してから年月が経って、再び感染症になる事態が何度もあり、こちらの根治治療の専門家に言わせると、日本やアジア諸国で昔治療した人は、これで再治療というのがとても多いのだという。

またか。うまく保険が効いても900ドルくらい、下手すれば1500ドルコース、プラス新しいクラウンに1000ドルか・・・と、ぐったりした気分で根治治療の専門家に診て貰うと、や、小さく炎症してるけど、それよりもどうやら歯が割れてるのではないか、と言われ、保険が効かない自費のCTスキャンを撮る。120ドル。それでもよく分からず。どうしますか、根治治療をやり直してもいいけど、おそらくこの歯は、そう長くは持ちませんよ、と言う。ううむ。

いったん考えさせて貰う事にして、最初に電話したかかりつけの歯科医にCTスキャン画像を送ってもらい、電話で相談してみたところ、やはり同意見で、ここでインプラントを勧められる。

インプラントか。顎の骨にドリルで穴を開けてチタンの人工歯根を埋め込むのか。これは怖いな。ネットで調べると失敗例や事故例が出てくる出てくる。これは怖い。

しかしまー死ぬことも無いだろうし(あり得るのだけど)、これからの生活の質を考えると、歯は欲しい。まー取りあえず話だけは聞いてみようと、インプラントの専門家を紹介してもらった。

普通の歯科医、根治治療の専門医、インプラントの専門医、とそれぞれ別々なのがアメリカである。そのほか、歯茎の専門医なども居たりする。

 

さてインプラントの専門医。ここでもぐるっとCTスキャンを撮られ、コンサルティング。これは何故か保険が効いて、支払いは7ドルくらいだった。最初の自腹のCTスキャン代の120ドルと、根治治療の歯科医の診察料85ドルは、まぁ、無駄だったことになる。

歯科に限らず、アメリカでは一般医と専門医で分業するので、どこか身体に不具合があると、最初にかかりつけの一般医に診て貰い、紹介状を書いて貰って専門医に行くことが多い。これでは医療費がかかるのは仕方が無い。けれども予約が取れれば、殆ど待たされずに診てもらえるというメリットもある。いい保険、広いネットワークをもつ保険に入ってればの話だけど。その保険もいろいろあり、一般医の紹介が不要で、専門医に診て貰えるものもある。いろいろヤヤコシイのである。

さて、インプラントの専門医。

インプラントが商売なので、いや不要ですわ、とは言わない。インプラントがいかに優れた近代の治療法かを説明する。チタンは人間の骨と同化する数少ない金属なのだ、とか何とか。あなたは下顎の骨も丈夫で太いし、神経も太い血管にも充分に距離がある。これはいちばん簡単な部類のインプラント手術だ。と言う。

ふむ。で、問題のお値段は、お幾ら万円なのか?

抜歯とチタンのコア埋め込みで2000ドルくらい。これに保険が効いて、1200ドルくらいの見積もりがでた。思ってたよりも安い。これに後で新しいクラウンを取り付けるとしてプラス1000ドルから1500ドルとしても、総額で2200ドルから2700ドルである。

いや大金だけども。職場の同僚(同じ保険に入ってる)に、インプラントをした人が居て、話に来ていたのは4000ドルだったので、思わず安いと思ってしまったのである。もっとも同僚の場合は、上あごのインプラントで、感染症もあり、その治療と、骨の形成も必要だったという事なので、そのぶん余分にかかったのだと思う。ネットワーク外の歯科医だと、保険のカバー率も違うし、年間にカバーされる金額の限度もある。

 

ともあれ、腹を括ってインプラントをすることにした。

抜歯。骨伝導というのか、それほど痛んでる歯ではなく、根っこも4本ある奥歯だから、けっこうゴリゴリめりめりという音が頭蓋に響く。途中、歯が砕けてすこし時間がかかったようだった。抜いた後すぐにインプラント、チタンのコアを埋め込むべく、顎の骨にドリルで穴を掘る感覚がして、ネジのようなものがキリキリと捩じ込まれていく感覚がする。今どきは、治療期間も費用も短縮できるので、抜歯ごの状態が良ければすぐにインプラントするのだそうである。

しかし、歯科医の思ったとおりにネジが入らなかったようで中断。失敗?

骨の治癒を待って、2,3ヵ月後に再手術すると告げられる。お?

まーそういうこともあるか。と、痛み止めのイブプロフェン800mgと、抗生物質のアモキシリン500mgを処方されて帰宅する。あ、それから特別なマウスウオッシュも処方された。近くのCVSにオーダーする。この薬代が〆て22ドルくらい。

抜歯後の出血もそれなりにあったけれども、ほどなくほぼ無くなり、麻酔が切れたあとの痛みもそれほどでも無いので、イブプロフェンは1回飲んだだけで止める。しかし800mgとは、通常量200mgから400mgの倍量である。いいのかこんなに飲んで、と思うけれど、痛風や腰痛時にはこれくらい飲めとも言われたりするので、そんなものかな、ともおもう。抜歯後の注意、みたいな紙切れを渡され、これにミルクシェイクやプリンを食えと書いてあり、笑う。いいのか、歯科医がそんな歯に悪そうなものを勧めて。

 

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とりあえず、それから2晩連続で禁酒した。2晩連続で禁酒など、近年さっぱり記憶に無い。もう今日は昼から飲もうかな、と思っている。たぶん大丈夫。

 追記:2017年3月に、この「30番」の全ての治療が終わりました。初診からおよそ1年ですので、順調な経過だったと思います。