断・胃食道亭日乗。旧「宇宙日記。宇宙にはぜんぶある。」

(消防署のほうから来ました。) 食道胃接合部癌→術後肝転移(Stage IV)のヲッさんの暮らし。

9/11そして歯医者に700ドル支払う

     f:id:dv6:20150913094640j:plain

歯の治療に700ドル支払った。

20年以上前に日本で治療した前歯2本のクラウンが汚れているし痛んでいるので交換したほうが良い、と歯科医がクリーニングのたびに言うのを、2年くらい延ばしていたのだけれど、他の歯の治療が終わり、保険のカバーが最大に効くというタイミングで観念してやってもらうことにした。保険のカバーが効いてなお700ドル。保険がなかったら2000ドル以上の見積もりだった。2000ドルって。 

14年前の9/11のときは、テレビも持っておらず、当時ダイヤルアップでインターネットに繋いだiMacで日本のニュースを見て、何だか飛行機事故が起きたらしい、という認識しかなかった。渡米後1年半近く居候してたギリシア人の家から引越して、ベースメントに中国人の大家、1階と2階にブルガリア人の移民1人とアメリカ人の黒人2人がルームシェアして暮らしている郊外の一軒家に引っ越して数ヶ月という時期だった。

 

米国の歯科治療がとんでもなく高い、というのは知っていたので、渡米する前にせっせと歯医者に通い、一応全ての治療は済ませてきたつもりだった。しかし渡米後1年もしないうちに歯の詰め物が取れた。当時は保険も無かったけれど、背に腹は変えられないので、働いてたパン屋の経営者の紹介で近所の歯科医に行った。詰め物と歯を掃除してセメントで再接着してもらって100ドルくらいだったと思う。100ドルって。その後さいきん歯医者を変えるまで、この歯医者には10年以上世話になることになる。この歯医者の「紹介」で、根幹治療の専門医や歯茎治療の専門医やら、これまでに都合20,000ドルくらいは使ったんじゃないだろうか。20,000ドルって。

 

911の日は、仕事帰りに小さなテレビを買った。しかし日本で良く報道されているような、WTCに飛行機が突っ込む映像は(現在も)規制しているのかどうか分からないが、見ることは無かった。あれは何故なんだろう。あの映像はネットで探せば出てくるけれど、アメリカのテレビ放送で映すことは無いようなのだ。

 

前歯2本のクラウンの交換は、2回目のアポで完了するという。2週間は白く輝きすぎる仮の前歯である。リンゴやハンバーガー程度の硬さの食べ物でも注意しろと言われる。ふと、日本で無保険で治療しても同じ治療に700ドルもかからないのではないか、と思う。たぶんかからない。けれども日本は保険による治療が前提だから、自由診療の歯科医以外は、使う材料なども限られていて、米国の治療よりも劣るような気もする。事実、アメリカの歯科医や根幹治療(Root Canal)の専門家は、日本での根幹治療が不完全だったために、年月が経つと感染症を起こして歯科医に来る日本人が多いと言う。アメリカの根幹治療は基本的に専門化が行うらしく、複数かかった専門家の相場は、保険が利かないと1本当たり2,000ドル近くかかる。

 

911のその当日と翌日くらいは、全米で飛行禁止になったはずである。NYのWTCだけでなく、国防総省(ペンタゴン)にも飛行機は突っ込んでいるのだけど、これはNYのに比べると、こちらでも毎年の911に報道が無いし、映像は皆無である。陰謀説や自作自演説が出るのも分かる気がする。ともあれああいう衝撃的な映像は、アメリカ人のプライドを傷つけるものでもあるのかもしれない。遺族のトラウマを考えれば、不用意にテレビで放送する類の映像ではないのだろう。

 

下の奥歯の奥に親知らずが斜めに半分だけ顔を出したのは3年位前の事である。40歳を過ぎて親知らずが出てくるのか。しかも1本だけ。私は新人類か。歯科医に聞くと、あー、いずれは抜いたほうがいいですねぇ。けどこれは全部出てこないでしょうし、他の歯を圧迫もしていないし、虫歯にもなっていないので、また後で考えましょう、との事であった。人に聞くと、下の奥歯の親知らずの抜歯はいちばんやっかいで、全身麻酔のうえ金槌でガンガン歯を割るのだ、と、さんざん脅された。

 

その後、マンハッタンには何度か行った。WTC跡地も1年半後くらいに見に行った。鉄柵に囲まれた跡地は掘り返され整地されている最中だった。寄せ書きや絵や人形や写真や何やらが鉄柵にかけられ貼り付けられていた。近くの韓国系のおじさんが経営する土産物で「I NY」と書いてあるTシャツを買った。相当にボロボロで、旅行の捨て着ようにいつも持って行くのだけれど、結局持って帰り、いまも時々着ている。

 

アメリカ人の歯科治療にかける情熱とお金は、相当なものである。ひとつには笑って並びの良い白い葉を見せることで、他者にひと目で健康さと育ちのよさを印象付けられるからではあるまいか。子供(や大人)が銀色のワイヤー状の物で歯並びを矯正しているのは良く見かける。アメリカ人は歯が命、なのである。そして高額の歯科治療日を考えれば、子供の頃から歯並びを含む手入れをしっかりするということは、結局節約にもなるというわけなのだろう。少なくても15年で20,000ドルは使わないだろう。

 

日本の戦後70年の原爆記念日にかんして、某戦勝国が「被害者としての日本を強調している」という批判的な談話を発したと聞く。無差別に民間人を巻き込んだという点において、原爆投下と911は共通する。違っているのはアメリカの経済力と軍事力が世界一であり、日本は国力が弱りつつあり、世界の中での重要性が沈みつつあるのに伴って、かつての所業への批判の声が大きくなってきているということである。911で犠牲になった民間人に何ら落ち度は無い。強いて言えば「悪の枢軸国アメリカの経済活動に参加していた」くらいの難癖である。

 

他の欧米人は良く分からないけれど、アメリカ人は歯が丈夫、というか、堅い噛み応えのある食べ物を比較的好むように思う。パンでもケーキでもしっかりとした食感のものが一般には好まれるような気がする。日本風のふわふわした食パンやシュークリームなどは、あまり好まれないのではなかろうか。いやあれは食パンやシュークリームではない別のふわふわして甘い食べ物としては、じゅうぶん好まれるとは思うけれど。けれど咀嚼が要る肉と合わせるパンは、やはりある程度噛み応えがあるものが合うだろうし、好まれるのも道理である。しかしこれも肉やちゃんとしたパンを常時食べられる社会階層に限るわけで、これも歯並び矯正歯科治療とリンクしているというわけである。

 

ヒロシマや長崎で原爆の被害に遭った子供を含む民間人は非戦闘員であり、無抵抗のこれ等を無差別に攻撃し死や苦痛を与えるすることは当時でも明らかな国際法違反である。原爆はしかし「戦争を終結させ連合国と日本国民の多くの命を救った」というのがアメリカ人の一般認識であり、教科書にもだいたいそんな論調で載っている。

 

歯は、いちど治療してしまうと、ほんらいの強度を回復することは無いのだろうな、と口中治療した歯だらけで実感している。人生もとうに半分を過ぎた(と思う)。動物は自分で食べられなくなったらお終いなので、自分(で選択出来るのであれば)もそうなるだろう。騙し騙し、いまある歯を使っていくしかないのだろうな、と、ザラザラする仮歯の裏を舌に感じながら思うのである。

 

911はアメリカの教科書に載っているのだろうか。国家は連邦政府レベルでは教育には関与せず、州政府や群の管轄だから教科書も千差万別で、これを載せてるものもひょっとして在るかもしれない。翻って日本の、文科省お墨付きの教科書はいまどうなのだろうか。私が学校で学んだ何十年も前と頃と、きっと大差ないと思う。日本を取り巻く時代や世界情勢は、ずいぶん変わってきているはずだけれど。

 

つぎの歯科医のアポは2週間後。仮歯を外し、「パーマネント」の歯を入れて貰ってお終いのはず。そして年末に日本に行くころには体制万全で神戸ビーフなどをもりもり喰らいたいと思っている。それ以外に和食で(比較的)堅く咀嚼が要る食べ物が思い浮かばない。漬物の類か烏賊の刺身か。